就労移行支援は、障害者の方の就職をサポートする福祉サービスです。令和元年に改正された障害者雇用促進法も手伝って、さまざまな障害を抱える方が就労移行支援サービスを利用して就職しています。しかしその一方で、ネット上には「就労移行支援を利用したのに就職できない」という声もあり、就労移行支援を利用するのをためらっている人もいるのではないでしょうか?
ここでは、就労移行支援を利用したのに就職できない理由を解説するとともに、就労移行支援サービスを使って就職を成功させるポイントを3つご紹介します。障害者雇用枠で就職を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- 就労移行支援を利用したのに就職できない理由
- 就労移行支援で就職したのに長続きしないことも
- 障害者雇用の企業が求める人材
- 就労移行支援で就職への力が身につく!
- 就職を成功させるポイント1:安定して通う
- 就職を成功させるポイント2:規則正しい生活
- 就職を成功させるポイント3:自分の状態を伝えられる
- 就労移行支援事業所が就職させないって本当?
- 就職できないのは能力が低いからではありません
就労移行支援を利用したのに就職できない理由
実際に、就労移行支援を利用したのに就職できないまま、就労移行支援事業所を退所してしまう人もまれにいらっしゃいます。就労移行支援で就職できないよくある理由を見てみましょう。
就労移行支援で就職できない理由1:急な遅刻や休みが多い
まず考えられる理由は、就労移行支援事業所への通所で急な遅刻や休みが多いこと。その事業所の就労支援員は「このまま就職しても、遅刻や欠勤が続くかもしれない」と判断して、遅刻や休みが減るまで就職を勧めない可能性があります。
また、企業側も、通所時の遅刻や休みの理由が気になるでしょう。障害者雇用で勤務時間に配慮があるとはいえ、「いつでも遅刻したり休んだりしていいですよ」という企業はさほど多くありません。遅刻や休みをせずに安定して通所した実績があると、面接でも高評価に繋がります。
就労移行支援で就職できない理由2:志望業種を極端に限定している
例えば「パソコンを使う仕事にしか応募しない!」というように、志望業種を極端に限定している場合も就職につながりにくくなります。業種を絞り込みすぎると当然、求人を出している企業も絞り込まれてしまうからです。
好きな事や得意な事を仕事に活かせたら素敵ですよね。その一方で、就職先を決めるにあたって、職種以外にも考えることがたくさんあるのも事実です。例えば、職場までの距離・環境・勤務時間など…。
職場に求める優先事項は何か、もう一度じっくり考えてみましょう。優先事項を洗い出すうちに、必ずしも好きな事とイコールではなくなるかもしれません。それでもきっと「就職して良かった」と思えるような仕事に出会えるはずですよ。
就労移行支援で就職できない理由3:就職活動に受け身である
「働きたい」という気持ちこそ、就職活動の原動力と言っても過言ではありません。就労移行支援は、安定した就労をサポートする福祉サービス。ご本人の「就職したい」という気持ちがなければ、就労支援員が無理矢理就職させることはできないのです。
「どこか就職先を見つけてくれたら働きます」という受け身の姿勢ではなく、「こんな仕事をやってみたいが、求人はありますか?」というくらいの意欲があると、道が開けてくるはずです。
就労移行支援で就職したのに長続きしないことも
就労移行支援で就職できない方がいる一方で、就職できたとしても長続きせずにやむなく退職してしまうケースも少なくありません。
厚生労働省が公表した平成30年度障害者雇用実態調査結果によると、統合失調症などの精神障害者の方の平均勤続年数は3年2ヶ月、発達障害者の方は3年4ヶ月となっています。
さらに、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センターが2017年に公表した障害者の就業状況等に関する調査研究によると、精神障害のある方の職場定着率は、就職して12ヶ月後には50%を下回る結果が出ています。
就職することがゴールではなく、仕事を続けることで生活が安定し、心豊かに過ごせることを目指したいものですね。
障害者雇用の企業が求める人材
企業側も、障害者雇用について模索しています。配慮したい気持ちはあるものの、障害のある方と一緒に仕事をするイメージやノウハウが十分でなかったり、従業員ひとりひとりにまで理解や意識が浸透していなかったりと、企業が抱える課題はまだまだ残されています。
このようなことから、障害者を採用する企業は、職務能力と同時に「従業員と円滑に接することができる人か」を重要視していると考えられます。円滑にコミュニケーションを取ることができれば、企業側も困っていることをフォローしたり、配慮の方法を考えたりできるからです。
また、「決められた日時にきちんと出社してくれるか」もチェックするでしょう。急なお休みや遅刻は他の従業員に負担がかかるものです。
障害者枠で就職を考えるなら、即戦力として活躍することよりも、社会人の基礎となるこれらのポイントを意識すると良いですね。
就労移行支援で就職への力が身につく!
障害者雇用で求められるポイントが見えてきました。周囲の人と円滑にコミュニケーションを取ること、急な遅刻やお休みをしないことを意識していると、就職への道が開けてくるでしょう。
とはいえ、これらの力を自分ひとりで身に着けるのは大変です。しかし、就労移行支援に継続して通うことで身につけることができます。就労移行支援は就職活動の場であると同時に、就職への力をつけられる場でもあるのです。
就職を成功させるポイント1:安定して通う
ここからはいよいよ、就労移行支援で就職を成功させるポイントを紹介していきましょう。
就労移行支援で就職を成功させる1つめのポイントは、安定して通うこと。つまり、決められた日・決められた時間に通うことです。
「今は遅刻することもあるけど、就職したらちゃんと通うから大丈夫」と思っていても、遅刻や休みの癖はすぐに直せるものではありません。就労移行支援事業所へ通所している期間も、始業時間までに事業所へ到着すること・予定外の休みは控えることを心掛けてみましょう。
就職を成功させるポイント2:規則正しい生活
就労移行支援事業所へ安定して通所するためには、規則正しい生活が欠かせません。具体的には、時間に余裕を持って起床する・決まった時間に食事をとる・疲れを翌日に残さないためにぐっすり眠ることが挙げられます。
規則正しい生活を送ることで体調を整え、疲れを溜めこみにくい体を作っていきましょう。また、毎日お風呂にゆっくり入ることも効果的です。一日の疲れを癒せるのはもちろん、清潔感もアップしますよ。
エナベル松戸の就労移行支援では、毎日セルフチェックの時間を設けています。セルフチェックでは、起床時間・就寝時間・食事の時間・入浴したかどうかなど、生活リズムを就労支援員と一緒に振り返ることで、規則正しい生活習慣が身についていきます。
セルフチェックを通して睡眠時間や食生活の乱れが分かった場合、就労支援員が改善策をアドバイスしたり一緒に考えたりしています。自分ひとりではなかなか変えにくい生活習慣も、サポートする人がいることでスムーズに変えていくことができますよ。
就職を成功させるポイント3:自分の状態を伝えられる
ポイントの3つめは、自分の状態を周りの人に伝えられることです。面接では「どんな障害をお持ちですか?」と尋ねられるでしょう。
自分のことを人に伝えるためには、自分自身の情報を整理しておく必要があります。例えば精神障害の場合、いつどんな経緯で発症したのか・発症するとどんな症状が現れるのか・症状にどう対処するのかといった基本的な情報は、すぐ答えられるように備えておくのがおすすめです。
また、自分の今の状態を客観的に判断し、周囲に伝えられることも大切です。「今は落ち着いている」「今は不安定になっている」と自分で判断できれば、それを早めに伝えることで周囲の人も対応しやすくなるからです。
自分の状態を伝えないまま無理して仕事を引き受けても、後で自分が辛くなるばかりでなく、仕事が中断することで他の従業員にも負担がかかってしまいます。そのために、自分にできることとできないこと・どんなサポートが必要なのかを自分で把握して、周囲の人に伝えることが大切になるのです。
エナベル松戸では、毎日のセルフチェックで自分の心の状態を見つめ直す時間を設けています。自分の気持ちを数値で表したり紙に書き出したりすることで、自分を客観的に見つめる力が自然と身についていきます。
また、アンガーマネジメントや行動認知療法といった心理ワークプログラムや、メンバー同士のディスカッションを通して、コミュニケーションスキルの向上も図っています。こうした取り組みも、自分ひとりではなかなかできないことですね。
就労移行支援事業所が就職させないって本当?
ネット上では、就労移行支援事業所が自治体からの報酬目的でわざと就職させないという噂も聞かれます。全国にある就労移行支援事業所の中には、まれにそういった悪いことを思いつく組織もあるかもしれません。
しかしエナベル松戸は、利用者の方が安定して働くことを心から応援する就労移行支援事業所です。「安定して働くにはどうすればいいか?」と常に問いかけ、利用者の方が気づきを得て、自分の意志で前に進んでいけるようにサポートしています。
また、支援員と利用者の距離が近いのもエナベル松戸の特色です。嬉しかったことや嫌だったこと・困ったことなどを何でも話せる信頼関係を大切に、利用者の方が安心して通所できる環境づくりを心掛けています。
就職できないのは能力が低いからではありません
就労移行支援で就職できない理由と、障害者枠で就職するためのポイントをご紹介しました。
就職は自分のスキルだけで決まるものではなく、縁やタイミングが左右するケースもたくさんあります。たとえ面接に落ちたとしても、自分の能力が足りないからと悲観することはありません。
誰しも必ず、得意はあります。エナベル松戸は、「自分にできることが分からない」と迷っている人の得意を見つけ出せるようサポートします。安定した就労に向けて自分を見つめ直し、一緒に前向きにチャレンジしていきましょう。