一般企業にしろ就労継続支援A型・B型にしろ、障害者の方が働くときに欠かせないのが合理的配慮。働きにくさを感じて困っていても、「わがままと思われたらどうしよう」「上手な伝え方が分からない」と、職場に合理的配慮を求められずに悩んでいる方もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、障害者雇用で一般企業に就職した、エナベル松戸の卒業生の合理的配慮の事例をご紹介します。あわせて、わがまま扱いされかねないNG例にもふれていますので、ぜひ参考にしてみてください。

障害者雇用の合理的配慮とは?

合理的配慮

わが国では、通称「障害者差別解消法」によって、“障害者から何らかの配慮を求められた場合には、過重な負担がない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要かつ合理的な配慮(合理的配慮)を行う”ことを事業者に求めています。

参考:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」

令和3年6月に、この法律の一部改正が公布され、民間企業で合理的配慮を行うことが「努力義務」から「義務」とされました(令和4年3月現在、まだ施行はされていません)。法の後押しもあり、障害者雇用はより働きやすくなっていくことが期待されます。

職場での合理的配慮の事例紹介

合理的配慮

さてここからは、実際にどんな合理的配慮が行われているかを紹介していきます。

なお、ここでは、エナベル松戸の就労移行支援から一般企業の障害者雇用枠で就職した方々の事例を紹介しています。合理的配慮に対する考え方は企業によりさまざまですので、すべての企業で通じるとは限りませんが、一例として参考にしてみてください。

卒業生の合理的配慮事例1:時短勤務

障害者雇用では、1日4時間から8時間勤務の求人が多くなっています。ハローワークの求人票で「勤務時間応相談」と書かれているケースもよく見られますが、勤務時間の配慮は代表的な合理的配慮といってもよいでしょう。

卒業生Sさんの事例

時短勤務

Sさんは、疲れを自覚しにくい特性に加えて「会社に貢献したい」という気持ちが人一倍強い性格です。そのため、就労移行支援を利用する前は、仕事を引き受けすぎて深夜まで残業し、疲労が重なり体調を崩してしまうのを繰り返していました。

そこで、障害者枠での就職活動では、「勤務時間が長くならないようにすること」「仕事量をリーダーに調整してもらうこと」を合理的配慮事項と決めました。

応募したのは1日6時間の事務職。5日間の実習を体験したところ、後半になるにつれて疲労が出てきたため、就職後は1日4時間からのスタートをお願いすることにしました。企業側も本人のスキルの高さや真面目な人柄を認めてくださったため、配慮事項も快諾され見事内定。就職後は、仕事に慣れながら徐々に勤務時間を延長していき、3ヶ月後には1日6時間勤務をこなせるようになりました。

卒業生Yさんの事例

時短勤務

統合失調症のYさんは、職歴の長かったデスクワークから物流業に転身しました。本人は「主治医からは7時間勤務可能と意見をもらっているし、7時間働けます」と意気込んでいましたが、ブランクが長いことや経験の少ない立ち仕事であることを考慮し、長く働き続けるために支援員が1時間の時短勤務を提案しました。

企業側も「長く続けてほしいので、無理のない時間で大丈夫ですよ」と後押ししてくださり、1日6時間勤務からのスタートとなりました。その後、順調に体力がついていき、3ヶ月後には1日7時間に延長することができました。

時短勤務の合理的配慮のポイントとNG例

求人票の記載よりも短い時間での勤務を合理的配慮として希望する場合は、「ゆくゆくは企業の求める時間で働けるようになる」ことが前提となります。ずっと時短勤務のまま働きたい、勤務時間は延ばせないと考える場合は、短時間の求人を検討したほうがよいでしょう。

なお、プライベートの都合など、特性や症状とは無関係の事情で時短勤務を合理的配慮として申し入れることはできませんので注意してください。

卒業生の合理的配慮事例2:担当者の固定化

コミュニケーションが苦手な人にとって、いろいろな人から仕事を振られたり質問する相手が分からなかったりするのは困りますよね。そこで、担当者を決めてもらう合理的配慮もよくあります。これにより、どの仕事を優先すればいいか分からない・誰に報告すればよいか分からないといった事態を防ぎやすくなります。

卒業生Nさんの事例

合理的配慮

物流業に就職したNさんは、ASDでコミュニケーションに苦手意識があります。毎日のルーティンワークが決まっているものの、通りかかった他部署の人から急に仕事を頼まれることがしばしばあり、何を優先してよいのか混乱して困っていました。

そこで、同じ作業を担当している従業員Aさん・Bさんに見守りを依頼し、イレギュラーの仕事も把握できる体制を整えていただきました。担当になった方は他部署と連携し、仕事を頼んでよい時間帯やボリュームも調整してくださいました。 今では、優先順位や引き受けてよい仕事量が分からないときは、Aさん・Bさんに確認することで、スムーズに仕事を進められるようになっています。

担当者固定化の合理的配慮のポイントとNG例

決まった担当者をつけてもらったら、その人と信頼関係を築けるよう報連相をしっかりと行いましょう。万が一、その担当者が苦手なタイプだったとしても、「あの人は苦手だから担当者を変えてください」と選ぶことはできません。支援スタッフを通して、少しずつお互いを理解できるといいですね。

卒業生の合理的配慮事例3:作業スケジュールの見える化

1日の作業スケジュールの見通しが立たないと不安な人や、「次は何をすればいいですか?」と言い出しにくい人もいるのではないでしょうか。その場合、1日のスケジュールを表にして、見える場所に貼ったりポケットに入れたりしておくとよいでしょう。

卒業生Kさんの事例

合理的配慮

量販店に就職が決まったKさんは、先の見通しが立たないと落ち着かなくなってしまう特性があります。また、1つの作業にどれくらい時間をかけてよいかも分かりにくいため、1日のスケジュール表があると安心、ということになりました。

そこで、入社前の面談時に作業スケジュール表の共有をお願いしたところ、「すでにスタッフ全員分のスケジュール表を作って運用している」との回答が!30分区切りで、誰がどの業務をするかが一目でわかる表が貼り出されていました。 これなら大丈夫、ということで、Kさんは表を見ながら順調に仕事に取り組んでいます。作業が時間内に終わらなそうなときも、事前にスタッフに相談して対処しているそうです。

作業スケジュールの見える化の合理的配慮のポイントとNG例

作業スケジュールの見える化は、1日の見通しを立てるためのものです。もしかすると、予定外の仕事が急に発生する場合もあるかもしれません。そのときは、「表に書いていないのでできません」と断らず、なるべく協力する姿勢を見せられるといいですね。

卒業生の合理的配慮事例4:その日の体調に合わせた業務割り当て

「作業スケジュールの見える化」と反対の考え方になりますが、その日の体調に合わせて無理なく取り組める業務を当日に割り当てるというものです。

卒業生Sさんの事例

合理的配慮

足に持病を持つSさんは、学校の用務員として勤務しています。外で清掃や環境整備をするのが主な業務ですが、体調が悪いと立ち仕事が辛くなる事があります。「立っていられないのでは働けない」と、仕事を休むこともしばしば…。

そこで、職場の担当者に室内で座ってできる業務を切り出していただき、その日の体調に応じて選べるように合理的配慮がなされました。体調が万全でなくてもできる仕事があることが安心感につながり、Sさんのモチベーションも上がって今まで以上に体調管理をしっかり行うようになりました。

その日の体調に合わせた業務割り当ての合理的配慮のポイントとNG例

選べる業務は、あくまでも雇用主が「やってほしい」業務です。「求められていないが得意だからやりたい」「苦手だからほかの業務をさせてほしい」は、企業側のニーズに合わないこともあるためわがままと受け取られかねません。

卒業生の合理的配慮事例5:クールダウンの時間

コミュニケーションが苦手な人や精神的に疲れやすい人は、「1人になりたい」と思うこともしばしばあるのではないでしょうか。業務の合間などに落ち着ける時間を少しとることは、効率アップやミスを減らすための合理的配慮といえます。

卒業生Hさんの事例

合理的配慮

製造業の軽作業に従事するHさんは自閉スペクトラム症をもち、周りにたくさんの人がいる環境が苦手です。普段は薬で和らげていますが、疲れがたまってくると気分がピリピリしてきてしまうのだとか。そのため、「仕事に行けそうにない」と自信を失い、欠勤が続いたことがありました。

雇用主へ相談したところ、「1人になりたいときは誰でもあるよね」と理解を示してくださり、つらい時は別の場所で作業してよいと許可がありました。別の部屋が空いている時のみ実施してよいこと、移動する時は担当者に伝えてから持ち場を離れること、分からないことがあれば質問しに戻ること、この3つが条件です。

1人になれる時間をもらえたことはもちろん、困り事に理解を示してくれたことに対して、Hさんはとても安心しました。「がんばってみる」と、スモールステップでじっくり仕事に取り組んでいます。

クールダウンの時間の合理的配慮のポイントとNG例

一般的に、小休憩をとるなら5分程度と考える場合が多いです。あまりにも小休憩の回数が多い・もしくは長いと、社会人マナーの観点からも好ましくなく、業務見直しのための話し合いが必要になるでしょう。

また、クールダウン中にスマホを見るのも、あらぬ誤解を受けますので避けましょう。

合理的配慮を伝える上手なコツ

合理的配慮

どんな合理的配慮を必要とするか、またどこまでなら配慮を受け入れられるかは、当事者と雇用主の数だけあり、本当にさまざまです。その場にいる人たち全員が気持ちよく働くためには、お互いの思いを伝え合い、話をすることが大切。その調整役となるのが、就労定着支援事業所です。

就労定着支援は、就労移行支援もしくは就労継続支援A型・B型から一般企業に就職した人が利用できます。就労移行支援から就職した場合は、そのまま就労定着支援の契約を結ぶことも多いでしょう。 就労定着支援は、障害者・企業のどちらも支援し、長く働けるように調整したり相談に乗ったりします。

配慮してほしいことがあれば、まずは就労定着支援のスタッフに相談し、どのように伝えるかを一緒に考えることが上手なコツです。「就職しても長続きしない」と悩んでいる人は、就労定着支援をぜひ検討してみてください。

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